竪穴住居
竪穴住居は、先史時代から中世にかけて日本で広く使用された主要な住居形態である。これは地面を円形や方形に掘りくぼめて作られた半地下式の建物であり、深さは通常70〜80センチメートル程度、床面積は一般的に20〜30平方メートル、一辺または直径が数メートルの規模を持つ。
構造的には、垂直に近い壁と平らな土間の床を持ち、掘立柱構造に上屋を架け、四周に壁を巡らせる。竪穴住居は主に竪穴部、地表部、上屋部の3つの部分から構成される。
竪穴住居は時代とともに変化した。縄文時代には円形、楕円形、方形、長方形、六角形など多様な形状が見られたが、弥生時代から古墳時代前期にかけては隅丸方形が主流となり、古墳時代後期以降は方形に近い長方形が一般的となった。
この住居形態の出現と普及は、核家族単位での生活様式の確立、集落形成の基本単位としての機能、気候や環境への適応といった社会的変化を示唆している。
竪穴住居の使用期間には地域差があり、西日本では比較的早く平地住居へ移行したのに対し、東日本では長く継続した。特に東北・北海道の寒冷地帯や中部山岳地帯では13世紀頃まで使用されていた。
竪穴住居は、日本の考古学において重要な研究対象であり、当時の人々の生活様式や社会構造を理解する上で貴重な情報源となっている。
公開日:2024.09.03